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札幌地方裁判所 昭和58年(行ウ)2号 判決 1987年5月21日

原告

向中野千鶴子

右訴訟代理人弁護士

山中善夫

被告

苫小牧労働基準監督署長

右指定代理人

菊地至

佐藤雅勝

佐藤久信

岩渕禮治

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が、昭和五五年六月一八日付で原告に対してした、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の処分はこれを取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の亡夫訴外向中野幹夫(以下「訴外幹夫」という。)は、訴外有限会社厚真建設運輸(以下「訴外会社」という。)に勤務していたが、昭和五五年三月二二日業務中に具合が悪くなり、同日死亡した。

2  原告は、同年四月二四日被告に対し遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、被告は、同年六月一八日付をもって、右疾病死は業務に起因するとは認められないとして、右給付等を支給しない旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。

3  しかしながら、訴外幹夫の死亡は業務に起因するものであり、被告のした本件処分は違法である。

よって、原告は本件処分の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1及び2の事実は認め、3は争う。

三  被告の主張

1  訴外幹夫は、訴外会社において、小型貨物自動車(排気量三六〇cc、通称赤帽車)の運転手として勤務していたが、昭和五五年三月二二日午前八時五〇分ころ、いつものように自家用車で出勤し、当時自分の乗車していた赤帽車を会社の車庫から出して事務所前に駐車したのち、事務所に入ってたまたま同所にかかった電話に応対しようとした際、同僚に身体の不調を訴えた。そして、便所に行った同人は、午前九時すぎころパンツをビニール袋に入れて戻ってきたのち、事務所の椅子に横になり、顔色も蒼白となったため、心配した同僚が救急車を手配し、同日午前九時三八分ころ苫小牧市立総合病院に収容され、治療を受けたが、同日午前一〇時五〇分ころ、同病院内にて死亡した。その後の医師の診断によれば、訴外幹夫の直接死因は、心筋梗塞であったと推定される。

2  心筋梗塞等の心臓疾患は、業務中に発病したとしても、当該労働者が有する心臓肥大、弁膜症、冠状動脈硬化、高血圧症等の既往の素因もしくは基礎疾病の自然的増悪により発病に至ることが多いところ、訴外幹夫は、高血圧症であった。

3  本件における訴外幹夫の労働状況を見ると、以下の点を指摘できる。

(一) 赤帽車の運転手の通常の仕事内容は、サービスセンターやスーパー等の前に赤帽車を待機させ、買い物客から直接依頼を受けてその指定場所まで荷物を運んだり、訴外会社からの指示で寿司等の荷物を運ぶことであった。

(二) 勤務時間は午前九時から午後六時までの九時間で、実働時間は八時附であり、訴外幹夫が赤帽車の運転に従事した四七日間の労働日のうち、時間外労働は一二日間、延約二五時間である。また、二時間以上の時間外労働は一二回中七回であり、いずれも訴外会社が年間契約をしている「えぞ寿司」の出前であった。

(三) 乗務日報によると、赤帽車の仕事は極めて待機時間の多い仕事である。

4  以上の事実及び被告の調査結果を総合すると、訴外幹夫の業務が同人に対し病的異常をもたらしたとは到底認められず、また、被災当時、訴外幹夫に対し強度の肉体的努力あるいは精神的緊張をもたらすような突発的な外的因子はなんら存在しなかったものである。そうすると、訴外幹夫の死亡は専ら被災者の体質的素因ないしは基礎疾病等の私的な原因に基づくもので、その病的素因の自然の結果と言うべく、業務と発病との間に相当因果関係はない。よって、本件処分は適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1の事実は認める。

2  同2の事実中、訴外幹夫が高血圧症であったことは否認し、その余は争う。

3  同3の事実中、(二)は争い、その余は認める。

4  同4は争う。

五  原告の反論

1(一)  訴外幹夫は、昭和五四年六月四日業務上の災害により左大腿骨開放骨折の傷害を受け、苫小牧市立総合病院に入院し、同年一一月一日退院に至るまで五回にわたる手術を受け、体馴らしのため退院して就労していたものであり、時機を見て再度入院手術の予定であった。

(二)  また、死亡の一か月前には岩見沢労災病院にてじん肺の精密検診を受け、じん肺管理Ⅱ程度の粒状影が認められる状態であった。

(三)  更に、右眼は白内障及び強い乱視という視力障害も有していた。

2(一)  訴外幹夫は、勤務先において、赤帽車の運転にとどまらず、他に技術者がいないという理由で二トン車も運転させられ、左大腿部に金属アームを入れた体のまま、昭和五五年三月一三日及び死亡前日の同月二一日には、一人で引越荷物の積込み及び積降ろし作業もさせられた。

(二)  特に、死亡前日の引越作業は、気温マイナス〇・三度、雪の降る中、気温が次第に降下していく状況下で行われた。

(三)  前記身体状況にもかかわらず、訴外幹夫の稼働時間は同僚のそれと変わらず、かえって出勤日数などは同僚の中でも最上位のグループに属するものであった。

3  以上の事実によれば、訴外幹夫は身体的ハンディを負った状況であるのに、他の同僚と同等どころかそれ以上の業務に就労させられていたものであるから、同人に対する肉体的、精神的負荷は非常に大きく、かつ蓄積しつつあったものであって、いつ心筋梗塞等の突発的発症が見られても不思議のない状態にあったというべきである。したがって、訴外幹夫の死亡は業務上の疾病死と言うべきで、本件処分は取消しを免れない。

六  原告の反論に対する認否及び再反論

1(一)  原告の反論1(一)の事実中、訴外幹夫が、昭和五四年六月四日業務上の災害により左大腿骨開放骨折の負傷をして苫小牧市立総合病院に入院し、手術を受けたこと及び同病院を退院後就労していたことは認める。

訴外幹夫は昭和五五年一月二二日医師から「働いてみよ」との指導を受け、同年二月一日から就労していたが、同年三月六日受診時、医師に対しとう痛、しびれ等の訴えはなく、同人に業務に支障を来すほどの身体異常はなかった。

(二)  同(二)の事実は認める。なお、訴外幹夫は、岩見沢労災病院にて、胸部エックス線写真上じん肺管理Ⅱ相当と判断されているが、肺機能検査では正常とされており、特に身体的ハンディと見るだけの症状とは考えられない。

(三)  同(三)の事実中、右眼が白内障であったことは認める。しかし、同人がその後も常時車両を運転していたこと、昭和五四年一〇月一三日、苫小牧市立総合病院でコンタクトレンズが調整されていたことを考えると、白内障のほかに乱視という視力障害があったとしても特に業務に支障があったとは認めがたい。

2(一)  同2(一)の事実中、訴外幹夫が二トン車の運転をさせられ、金属アームを入れた体で昭和五五年三月一三日及び同月二一日引越作業に従事していたことは認める。しかし、髄内釘の挿入によって赤帽車の運転、二トン車の積降ろし作業が過度の労働になるものではないこと、二トン車の運転をしたのは二回に過ぎず、既に昭和五五年二月一日から赤帽車の運転をして運転業務については身体も慣れてきていたこと、同年三月一三日については四時間の作業で、これにつき訴外幹夫から特段の苦情もなかったこと、同月二一日については、約五〇分間の作業であったこと等を考え合わせると、訴外幹夫の従事していた業務が過激であったとはいえない。

(二)  同(二)の事実中、作業時の天気が雪であったことは認める。しかし、その量は無視するに足りるものであり、気温がマイナス〇・三度というのも北海道においては特異な条件とはいえない。

(三)  同(三)の事実は否認する。なお、訴外幹夫の延労働日数は同僚の平均を上回っていたが、同僚四名の内二名と同日数であるし、時間外労働の状況は同僚の平均を下回っていたものであり、また、同人の従事していた赤帽車の仕事が極めて待機時間の多い仕事であったことを考慮すると、業務上過重な労働によって疲労が蓄積していたと認めることはできない。

3  同3は争う。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  請求原因1及び2の各事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、訴外幹夫の死亡が、労働者災害補償保険法第一二条の八第二項の援用する労働基準法第七九条、第八〇条所定の「業務上死亡した場合」に該当するか否かにつき検討する。

業務上の死亡と言うためには、疾病による場合についていえば、業務に基づく疾病に起因して死亡した場合、即ち業務と疾病、疾病と死亡との間にそれぞれ相当因果関係が認められる場合であることが必要であり、客観的にみて、当該業務に、当該疾病ひいては死亡を惹起する危険性が認められることが必要である。ところで、訴外幹夫の直接死因が心筋梗塞であったと推定されることは当事者間に争いがないから、以下には、訴外幹夫の業務と同人の心筋梗塞との因果関係について検討する。

被告の主張中、同1並びに同3の(一)及び(三)の事実、原告の反論中、訴外幹夫が、昭和五四年六月四日業務上の災害により左大腿骨開放骨折の負傷をして苫小牧市立総合病院に入院し、手術を受け、退院後就労していたこと、同人が、岩見沢労災病院にて胸部エックス線写真上じん肺管理Ⅱ相当と判断されていたこと、同人の右眼が白内障であったこと、同人が二トン車を運転させられ、金属アームを入れた体で引越作業に従事していたこと、死亡前日の作業時の天気が雪であったことは、いずれも当事間に争いがない。これに、(証拠略)及び原告本人尋問の結果(後記採用しない部分を除く。)を総合すると、以下の事実が認められる。

1(訴外会社での稼働歴)訴外幹夫は、昭和五四年五月一〇日、訴外会社の大型車運転手として採用され、勤務していたが、同年六月四日、業務上の災害で左大腿骨を骨折して苫小牧市立総合病院に入院し、髄内に金属アームを入れて固定する手術を受け、同年一一月に退院した後も休業のうえ通院していた。その後、昭和五五年一月二四日、担当医から軽作業から始めて働いてみるよう勧められたこともあり、訴外会社に対し出社して働きたい旨申し入れ、同年二月一日から稼働し始めたが、左大腿の前記障害のため、大型トラックの運転は未だ無理であるとの配慮から、身体を馴らすため、訴外会社と経営者を同じくする赤帽ワイドサービス有限会社において、赤帽車の運転業務に従事することとなった。

2(訴外会社での業務内容)訴外幹夫の業務内容は、サービスセンターやスーパーマーケット等の前に赤帽車(排気量三五〇ccの小型貨物自動車)を待機させ、買い物客から直接依頼を受けて手荷物等をその指定場所まで運んだり、訴外会社の指示で寿司等の荷物を運ぶものであり、午前九時に会社を出発してそれから午後六時までの間、会社に申し込みのあった場合はその割当に基づき、割当てがなかった場合は街路に待機して仕事を捜すなどして、手荷物等の搬送を行うものであった。このほか、一トン又は二トントラックを運転して引越業務に従事したことが再稼働後四回あった。

3(稼働状況)訴外幹夫の勤務状況は、昭和五五年二月一日再稼働し始めてから死亡前日の同年三月二一日までの五〇日間のうち、四七日間出勤しており、その出勤日数は、赤帽車運転手六名のうち、伏見和雄、杉本栄一郎と並んで最高であった。また、その間時間外労働は最短二〇分から最長四時間二〇分までの計一一回で、うち二時間以上の時間外労働六回は、いずれも訴外会社が年間契約しているえぞ寿司店の出前当番日であった。えぞ寿司の出前は、毎月二回の定休日以外毎日、赤帽車七台を交替で派遣しているものであり、当時は午後九ないし一〇時ころまでの間、平日で三件、土、日曜で一〇件程度の出前があった。時間外労働回数一一回(延べ二一・三時間)というのは赤帽車運転手六名中多いほうから四番目で、同僚労働者五名の平均は一二・八回(平均延べ二九・八時間)であり、訴外幹夫の一回あたりの時間外労働時間平均が約一・九四時間というのは、右赤帽運転手六名中長いほうから五番目で、右同僚労働者の平均は約二・三二時間である。

4(待機時間)赤帽車運転は、待機時間の多い仕事であり、訴外幹夫の場合、別表一記載のとおり、昭和五五年二月一日から同年三月二一日までの実働四七日間中、一日平均約六・四回の待機があり、内待機時間三〇分を超える待機は一日平均約二・八回である。また、昼食時間帯における待機時間は、当日の仕事の状況に応じて不規則ではあるものの、一時間以上の日が三一日間あり、四〇分以上の日は更に一〇日間あった。

5(通勤状況)訴外幹夫は、自家用車で片道一五分ほどかけて通勤しており、毎朝午前八時三〇分ころ家を出て、午後六時三〇分ころ、あるいは午後九時ないし一〇時ころ帰宅していた。

6(死亡前日の稼働状況)訴外幹夫は、昭和五五年三月一三日午後一時から五時まで、二トントラックで引越業務に従事したほか、死亡前日の同月二一日午後三時二〇分から四時一〇分まで、降雪の中二トントラックで引越業務に従事している。しかし、同日の苫小牧測候所の記録によれば、午後三時には気温マイナス〇・三度、降水量〇・〇、天気雪と記載されており、午後六時には気温マイナス〇・五度と記載されているのであって、寒さも雪もさほど厳しいものではなかった。そして、同日は、午後八時まで二時間の残業をして帰宅し、その後食事をとって午後一一時過ぎころ就寝した。

7(死亡当日の状況)昭和五五年三月二二日、訴外幹夫は、午前七時ころ起床して午前八時五〇分ころいつものように自家用車で出社し、当時自分の乗車していた赤帽車を会社の車庫から出して事務所前に駐車したのち、事務所に入ってたまたま同所にかかった電話に応対しようとした際、同僚に身体の不調を訴えた。そして、便所に行った同人は、午前九時すぎころ、パンツをビニール袋に入れて戻ってきた後、事務所の椅子に横になり、顔色も蒼白となって脂汗が出てきたため、心配した同僚が救急車を手配し、同日午前九時三八分ころ苫小牧市立総合病院に収容され、治療を受けたが、広範囲にわたる心筋梗塞のため、同日午前一〇時五〇分ころ、同病院にて死亡した。

8(訴外幹夫の身体状況)訴外幹夫は、昭和二七年一二月から昭和四八年三月まで千歳鉱山で稼働し、昭和五五年二月二〇日岩見沢労災病院にて胸部エックス線写真上粒状の陰影が認められ、じん肺管理Ⅱ相当と判断されていたが、肺機能は正常であった。また、右眼は白内障及び乱視の障害があり、昭和五四年一〇月一三日苫小牧市立総合病院で眼科を受診してコンタクトレンズの処方を受けていた。更に、前記のとおり左大腿に障害を有し、いずれ金属アームの除去手術を受ける予定であり、昭和五五年一月一〇日時点で少し跛行が存したが、同年三月一七日時点では既に八〇パーセント程度回復し、苫小牧市立総合病院の担当医に対し特に異常を訴えていない。右担当医は、二〇キログラム程度の品物を運んでいるとの訴外幹夫の報告に対し、前記障害がこの程度の労働には全く支障がなく、また日常生活にも支障がなかったと考える旨述べている。

9(訴外幹夫の心筋梗塞のリスクファクター)訴外幹夫は、前記左大腿骨骨折により苫小牧市立総合病院に入院中、血圧一八四―一一〇mmHgを頂点として、別表二記載のとおり高血圧の傾向があった。同病院の担当医は、軽い尿糖の出現、肝機能低下があり、高血圧が既に存在していると診断している。また、昭和五五年二月二〇日岩見沢労災病院を受診した際は、血圧が一三〇―九〇mmHgであり、同病院の担当医は、一度の測定を根拠に高血圧症とは診断できないものの最低血圧がやや高値であったと述べている。このほか、訴外幹夫は、一日平均一〇ないし二〇本のタバコをたしなむ喫煙者であり、一日平均一合程度の飲酒もしていた。

右の事実につき、証人伏見和雄の証言中には、訴外幹夫が前記認定の業務に加え、訴外会社の依頼で四トントラックの運転をして機械等の搬送をすることも四割以上の割合であった旨証言する部分があるけれども、他方で、同証人が、訴外幹夫の訴外会社での仕事の実情はわからない旨証言していることに照らせば、右機械等搬送についての証言は採用できない。また、原告本人は、死亡前日の訴外幹夫の帰宅時間は午後一〇時ころであった旨述べるけれども、(証拠略)によれば、同日の乗務日報には乗務終了が二〇時であった旨の明確な記載があり、訴外幹夫が帰宅前寄り道しないとも言えないことに照らせば、右原告本人の供述により、訴外幹夫の死亡前日の残業が二時間であったとの前記認定を覆すことはできない。

更に、(証拠略)、証人若葉金三の証言中には、訴外幹夫の高血圧が負傷、手術による一時的な現象であって、高血圧常態者とはみられない旨の記載ないし供述部分が存し、原告本人尋問の結果中にも、千歳鉱山に稼働していたころ訴外幹美が血圧が低いと話していた旨の供述が存する。しかしながら、(証拠略)により認められる別表二の血圧は概ね高値を示しており、これが手術前、手術後に及んで、一時的な現象に過ぎないと認めるに足りる証拠も存しないことに照らせば、右供述はいずれも採用できず、これをもって前記認定を覆すことはできない。

そして、他に前記各認定を覆すに足りる証拠はない。

三  以上の事実によれば、訴外幹夫の業務は、時に引越業務等重労働に属する態様も存したものの、主体は待機時間の多い、手荷物等運搬という軽作業であって、その業務自体に客観的に心筋梗塞を引き起こすような危険性は認められないというべきである。そして、左大腿に金属アームを挿入しているという身体的ハンディを有したとはいえ、これも日常の業務には全く支障のない程度に回復しており、その他のじん肺、視覚等の障害も業務に支障が存したとは認められず、訴外幹夫の身体状況が、特にその業務の危険性を高めているということもできない。また、前記認定の死亡前日ないし当日の状況に照らせば、心筋梗塞発症時、特に過激な業務が行われていたわけでないことも明らかである。以上の点に加え、前記認定の訴外幹夫には高血圧の傾向の存したことを総合して考えれば、結局、訴外幹夫は、業務遂行中にたまたま心筋梗塞を発症し死亡したものと認めるのが相当である。

この点につき、(証拠略)、証人若葉金三の証言中には、業務上の過労による自律神経失調状態が継続し、交感神経興奮性の高進したごく軽度の刺激で血管れん縮を起こしやすい不安定な状況にあったことが、発病と死につながったと述べる部分があるけれども、前記認定事実に照らし、さほどの過労を蓄積させるような業務内容であったとは認められず、右意見を採用することはできないし、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

したがって、訴外幹夫の心筋梗塞による死亡を業務上の事由によるものとは認められないとしてなした被告の本件処分は、適法なものということができる。

四  よって、原告の本訴請求は理由がないので棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 塩谷雄 裁判官 北澤晶 裁判官 秋吉仁美)

別表一 日別実車回数及び待機(休憩)時間の状況

<省略>

別表二 訴外幹夫の苫小牧市立総合病院での血圧値

<省略>

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